こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
仕事人間だった筆者がきっつい上司に潰され、5か月以上休職したのち復職しました。
休職期間中は仕事のことを一切忘れて、デスメタルTシャツを着込んで、デスメタルを聴きながら療養していたんですよ。
さて休職して自分と向き合う時間ができたので平成の振り返りをしたいんですが、僕にとって平成の30年間(から令和の現在まで)ほぼどっぷりヘヴィメタルを聴いて過ごしてきたんですね。
そこで平成の回顧録的観点から、もはやクラシックだが色褪せないヘヴィメタルの名盤を紹介します。
歴史は風化したり断絶したりしますが、優れた作品を聴いた時の衝撃は鮮烈に思い出されます。
第23回目はイタリアのプログレッシブ・デスメタル、Sadist(サディスト)の3枚目のアルバム「Crust」です。
「Crust」は1997年リリースで、1997年は平成9年になります。平成9年は筆者が23歳のときに当たります。就職浪人してました。
■1997年の日本(wikipediaより)
◆肩出しファッションが流行、女子高生の間ではルーズソックスが継続して流行する◆ロッテが日本初のキシリトールを配合したガムを発売し、大ヒット◆14歳の少年による酒鬼薔薇事件や18歳未満の少年による凶悪犯罪が注目される◆サッカー日本代表が、W杯フランス大会に向けたアジア第3代表決定戦に勝利、W杯初出場を決める◆北海道拓殖銀行や山一証券など大型企業倒産・銀行破綻が相次いだ
◆ベストセラー:妹尾河童『少年H』柳美里『家族シネマ』渡辺淳一『失楽園』広末涼子『H』『R』◆映画:『うなぎ』『失楽園』『パラサイト・イヴ』『ロミオとジュリエット』『イングリッシュ・ペイシェント』『ジェラシックパーク・ロスト・ワールド』『スピード2』『フィフス・エレメント』『コンタクト』『コン・エアー』『エアフォース・ワン』『メン・イン・ブラック』『タイタニック』...etc.
Sadistは1991年、イタリアのジェノヴァで、ドラマーのペソ、ギターのトミーらが中心となって結成されました。
90年代は米国のフロリダで多くの個性的な純正デスメタルバンドが高品質の作品をリリースしていて、一方、スウェーデンでは新しいメロディックデスメタルの流れが奔流となり、イン・フレイムス、ダーク・トランキュリティー、アット・ザ・ゲイツ、アーチ・エネミーなどが叙情的なメロディやハーモニーをアグレッシヴミュージックに取り入れた、かつてない優れた作品が多数登場していました。
アメリカやスウェーデン以外でも、ドイツやオランダやイタリアなどの周辺国において、エクストリームミュージックの変わり種バンドがアンダーグラウンドで蠢いていたんですね。
さて、Sadistの本作「Crust」です。
Sadistはデスメタルをベースにしつつもクラシックやジャズ&フュージョン、民族音楽や映画音楽のエッセンスを取り入れたバンドで、「プログレッシブ・デスメタル」と呼ばれる最古のバンドです。
1993年のファーストフルアルバム「Above the Light」がアンダーグラウンドシーンで注目を集め、2ndアルバム「Tribe」ではよりプレイに整合感があり実験的な音楽スタイルで幅を広げました。
そして3枚目の「Crust」では音楽的に完成されたと思っています。
アグレッシブなデスメタルとジャズ&フュージョン要素のバランスが絶妙ですね。
米国のCynicやスウェーデンのMeshuggahが好きな人なら本作も気に入ってくれるのではないでしょうか。
Sadistのキーマンは間違いなくオリジナルメンバーでギターとキーボードを操るトミーです。
YouTubeでライヴ映像を見ることができますが、左手でギターを弾きながら右手で鍵盤を弾くような器用なことをやってるんですよ!
アグレッシブなギターリフも弾けるしシンセサイザーで叙情的なインスト曲も作れる。
感情を揺さぶるギターソロのセンスも抜群ですしイタリア的な臭さがなく垢抜けていますね。
僕はクラシックも好きでよく聴くのですが、イタリアは言うまでもなくヴィヴァルディやヴェルディ、プッチーニ、レスピーギ、ロッシーニなどの大作曲家を生んでいますし、ゴッドファーザーのテーマ曲を作曲したニーノ・ロータや映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネなど音楽大国なんですね。
ギタリストのトミーの音楽的なバックグラウンドには間違いなく母国の巨匠たちの音楽があるはずです。
本作「Crust」ですね。
インダストリアル的なリフの1曲目「Perversion Lust Orgasm」、2曲目「The Path」や3曲目「Fools and Dolts」は多彩なリフが聴けるミドルテンポ曲。
5曲目「Ovariotomy」や7曲目「Obsession-Compulsion」や9曲目「I Rape You」はジャズ&フュージョン的なインタープレイを織り交ぜていて僕は大好きです。
ベースのアンディとドラムのオイノスのリズム隊もテクニシャンで聴きどころ満載です。
ベースのアンディはフレットレスなのか?Cynicのショーン・マローンを彷彿とさせるプレイで存在感抜群。
前作までのペソに替わってドラムを演奏するオイノスですが、手数足数の多い派手なプレイで上手いです。彼のプレイが聴けるのが本作だけというのが残念ですね。
デスメタルバンドのSadistですが、実は本当の聴きどころは僕はインストゥルメンタル曲だと思っています。
ファーストフルアルバム「Above the Light」の日本版ボーナストラックの「T.C.Psyche」という曲だったり、2ndアルバム「Tribe」の「From Bellatrix to Betelgeuse」だったり。
「From Bellatrix to Betelgeuse」なんて、普通はアルバムのハイライト曲を3曲目あたりに持ってくるんですが、「Tribe」の3曲目がインスト曲なんですね。壮大なシンセサイザーにツーバスドラムとキーボードソロを挿入した名曲です。
「Crust」では4曲目の「Holy...」と8曲目の「...Crust」がインスト曲なんですが、アルバムの良いアクセントとなる佳曲です。
「Crust」の後、バンドは2000年に「Lego」というこれまた大きく方向転換を図る実験的なアルバムを作っているらしいのですが、某メタル専門誌の評価が余りにも低かった記憶があり、「Lego」以降の作品は未聴です。
2022年現在も活動中で新譜も出しているみたいです。
彼らのアルバムは昔はトイズファクトリーから日本盤が出てたんですが、その後アヴァロンに変わりトゥルーパーエンタテインメントに変わってますね。
またコツコツとSadist聴き込もうかなあと思っています。
デスメタルをただのうるさい馬鹿げた音楽だと思ってはいけない。極めて芸術性の高い作品もあるのだ。若い頃ビートルズの先鋭的な音楽を聴いて衝撃を受け、50代、60代になってもマニアで居続ける人がいるが、デスメタルも同じだ。おそらく50代、60代になっても愛聴するだろう。そう思っています。
筆者も40代半ばになりましたが、変に老成することなく、このときのSadistのように、粗削りで暗く尖ったオッサンでありたいと思います。