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『50歳の壁 誰にも言えない本音』河合薫 著

こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。 

 

今回の読書レビューは、河合薫さんの『50歳の壁 誰にも言えない本音』です。

 

河合さんは、ユダヤアメリカ人、アーロン・アントノフスキーの「健康生成論」とその中核概念である「SOC(Sense of Coherence=首尾一貫感覚)」を論拠として、我々中年の生き方を研究しておられる健康社会学者です。

 

僕も注目している識者の一人で、下の記事も書きました。

 

trrymtorrson.hatenablog.com

 

『50歳の壁 誰にも言えない本音』は、基本的に『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?半径3メートルの幸福論』の延長線上にある著作です。

 

河合さんは学問研究においてたくさんのインタビュー実績をお持ちで、『50歳の壁』では、おもに中年男性や中年女性の人に言えない様々な悩みを取り上げています。

 

「そうそう、まさにそれで悩んでいるのだ」

「中年の悩みあるある」

 

おびただしい無名の中年たちとともに悩み、自虐とディスりを交えて励まし、どん底でも「我々は幸せになるために生まれてきたのだ」と主張します。

 

本書に取り上げられた悩みの数々が、僕の胸に突き刺さるものばかり。

 

「働かないおじさんと思われているのか不安です」

「友や同僚がどんな会社で、どんな暮らしをしているのか、気になります」

「肩書き、年収がよかった時代の名刺が捨てられません」

「育成する部下・後輩がいません」

「50代、自分を𠮟って伸ばしてくれる上司がいなくなりました」

「友だちと呼べる人がいません」

「私は幸せなんでしょうか?」

「やりがいを見失っていますが、仕事にやりがいって必要でしょうか?」

「ずるずると会社に残る私は、ダメな人間なのでしょうか?」

「私に向いた会社ってあるのでしょうか?」

「自分より稼ぎのいい妻に心がざわつきます」

「妻から「つまらないおじさんになった」と言われます」

「50歳を過ぎて結婚しても大丈夫でしょうか?」

「私は男として終わりなのでしょうか?」

「そろそろ親の介護が現実問題になってきました」

 

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会社にいても自宅にいても、頭から離れない曖昧な不安の数々。

 

後半に挙げられている「夫婦の問題」や「男女の問題」。

僕は今のところ該当しないのですが、女性活躍推進で妻のほうが出世したとか、50歳過ぎて未婚で独身だとか、当人にとっては深刻な悩みだと思います。

 

これらの問題に対する、河合さんの並々ならぬ寄り添いと回答が実に絶妙です。

 

本書の後半において、これらの問題を乗り越えるための重要な論点を、河合さんは次のように列挙しておられます。

 

アントノフスキー博士の「SOC理論(Sense of Coherence」です。

 

「SOC理論」は、「有意味感」「把握可能感」「処理可能感」という3つの概念で構成されています。

 

「有意味感」とは、「これは私への挑戦だ!立ち向かうことに意味がある」と思える感覚。

「把握可能感」とは、「やはりそうきたか!そうなると思ったよ」と、自分が直面した困難や危機に対処できる感覚。

「処理可能感」とは、「なんとかなる、やるしかない」という前向きなたくましさの感覚です。

 

そう言えば同じようなことを下の記事でも書いていました。

 

trrymtorrson.hatenablog.com

 

自分を取り囲む「半径3メートルの世界」で、人生経験や人間関係の蓄積を大事にすることが重要だと河合さんは主張しています。

 

河合さんはもう一つ重要なことを書いておられて、それは会社から与えられた収入や役職という「外的な力(外的資源)」よりも、「内的な力(内的資源)」こそが欠かせないのだとおっしゃっています。

 

内的な力(内的資源)」として、河合さんは次の8つを挙げています。

 

▶意志力

▶自己受容

▶自律性

▶人格的成長

▶自尊心

▶環境制御

▶積極的な他者関係

▶人生における目的

 

内的な力は、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった、いわば人格の土台となる無形の資産獲得につながるリソースであり、内的な力を獲得・強化することが、成熟した大人へのプロセスでもあります。

 

河合さんはきれいごととして書いているのではなく、「働かないおじさんの反乱を起こせ!」と、泥臭くもがき苦しむことが必要だと言っておられるのですね。

 

きちんと悩むとは考えること。悩みをおろそかにしていると、「50歳の壁」は越えられません。誰にも言えない本音ときちんと向き合い、考えて、考えて、学んで考える。それが最善最強の対処につながり、危機が成長の糧になっていくのです。

 

冷静に学び考えて、しかし、泥臭くもがき苦しんで中年の危機を乗り越えたいものです。

 

本日の記事は以上です。

 

☟『50歳の壁 誰にも言えない本音』河合薫 著(MdN新書)