こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
僕は上司のパワハラと過労で半年間休職したことがある人間です。
もう復職して3年になりました。
サラリーマン勤め25年以上ですが、45を過ぎてからの仕事人生からのドロップアウト。
ドロップアウトといっても辞めたわけではなくて普通に復帰して働いてるんですが。
怪我での病気休暇ではなくて精神面での病気休暇というのは、勤務成績に重大な悪影響を与える。
これを痛感しています。
上司の能力評価が中の下となり、年下が次々と役職に昇進しているのに、僕は平社員のまま部署を都合よく回されるだけ。
重要な事業を任されるでもなくマネジメント業務を任されるでもなく、情報も集まらず若手からの信任も薄い。
まあ年齢相応の給料を貰っているので文句を言うつもりは無いですが。
中年サラリーマンが地位を失って給与を削減されたりすると、途端に生活の危機に追い込まれる。
子育てと住宅ローンの多大な経費がのしかかる。
これは僕だけの問題ではなく、日本社会全体の問題です。
派遣や有期雇用といった非正規労働者が増加して、「家計補助」のレベルの収入だけで暮らす人が激増しています。
「車を持てて住宅ローンを組めて結婚して子が成人するまで教育費が賄えて老後資金も貯蓄できるという水準」が、最低賃金の全国平均であるべきだと思います。
そんなの無理、諦めろというほうがおかしい。
誰もが将来に希望を持ち、楽しいライフプランを設計できるような世の中になることを求めるのが当たり前であり、政治の役割ではないでしょうか?
ワーキングプアが激増しても見て見ぬふり。
真面目にコツコツ働いている労働者をバカにしているのはだれか?
「普通」の家庭が「普通」の豊かさを享受できる世の中にならなければならない。
繰り返しになりますが、非正規雇用であっても、世帯主や単身者であれば、車を持てて住宅ローンを組めて結婚して子が成人するまで教育費が賄えて老後資金も貯蓄できるという水準であるべきです。
非正規雇用であっても、ライフプランが立てられる。
将来のヴィジョンを当たり前に描けるようになるべきだというのが当たり前の考え方ではないでしょうか。
前置きが長くなって申し訳ありません。
第一生命経済研究所のエコノミストである永濱利廣さんの著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』を読みました。
僕が上につらつらと書いてきたことに関わる書物です。
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永濱さんはテレビやネットでのメディア出演が多数で、経済ニュースのご意見番の方ですね。
本書は2022年5月出版で、最近の日本経済の状況についてまとめられています。
この30年間の日本経済の低迷ぶりを「日本病」という言葉で表現されています。
これは海外のエコノミストのあいだでも話題になることだそうです。
「日本病」とは、低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」のことです。
まさにこのせいで、日本人は真面目にコツコツ働いているにもかかわらず、生活が豊かにならないのです。
永濱さんは本書でこの問題について解説しているのですが、「日本病」の原因の一つである政策の失敗について次のように述べています。
本書の肝の部分であり、僕も記事で何回も同様の趣旨のことを書いてきました。
ちょっと長くなりますが引用します。
日本の政府債務残高の伸びは少なすぎる
サマーズ氏やバーナンキ氏に限らず、海外の主流派経済学者の間では、デフレ脱却のためには金融緩和に加えて財政の積極的な出動が必須であるというのが常識になっています。
しかし、日本では均衡財政主義が主流になっています。そして、マスコミでは「日本の政府債務が増えて大変だ」というメッセージが定期的に流されるので意外に思われるかもしれませんが、海外と比較したグラフを見ると、明らかに日本の政府債務残高は増え方が少ないことがわかります。
2001年の政府債務を100とした場合、最も多いイギリスでは6倍以上、アメリカで5倍以上、フランス、カナダも約3倍、ドイツで2倍程度になっています。これに対して日本とイタリアは2倍にも満たない状況です。
よく新聞などで「過去最大の予算」「拡大する財政赤字」と、まるで大変なことが起きたかのように騒がれますが、これはナンセンスです。政府債務は増えるのが常識で、毎年予算は「過去最大」がふつうなのです。
バランスシートでは、「債務」の対には必ず「資産」があります。つまり、政府が債務を増やして支出を増やすということは、民間部門に支払われた分だけ、民間部門の資産が増えているということなのです。
(中略)そうすると、政府債務残高を減らす=財政の健全化は不要なのか?という疑問が湧いてくると思います。実は、そこが日本と海外の専門家の考え方の最大の違いにもなります。
日本では、政府債務をあまり増やさないほうが良いという意見が多く見られます。政府の一般会計予算を見る立場で、政府内だけを見たら、確かに債務は増えないほうが良いということで、プライマリーバランス(国や自治体の基本的な財政収支)を黒字化したくなるでしょう。日本で政府債務残高に危機感を持つ考えは、すべてこの立場から来ています。
しかし、もっと俯瞰的に経済を見れば、「中央銀行」という特殊な存在に気付くはずです。
現在の日本の政府債務の約半分は、日本の中央銀行である日銀が新たに発行したお金で国債を市場から買って吸収しています。国債保有者に対して政府は利息を払いますから、政府は日銀に利息を払っていますが、日銀の儲けは国庫納付金として最終的に政府に戻ってきます。また、元本についても、政府は民間企業や個人とは違うので、借り換えで続けていけます。
つまり、政府債務のうち、日銀が持っている債権は別枠で考えなくてはなりません。
これが海外の専門家では常識の「統合政府」と呼ばれる考え方です。
日銀の出資証券は半分以上、日本政府が持っていますので、いわば民間企業における子会社のようなものです。民間企業では子会社も含んだ連結決算をするのが常識であり、連結決算においては親会社・子会社のお金の貸し借りは相殺されます。同じように、事実上の政府債務は、中央銀行の保有分を別枠で考えるべきだという論です。
実際にグラフを見ると、政府債務残高は毎年増えていますが、日銀保有分を抜いてみると一気に減ることがわかります。さらに日本国債というのは海外保有の割合が低く、9割程度が国内で持たれています。ゆえに、日本国債はマーケットで不安視されていませんし、日本国債の信用力を反映したクレジット・デフォルト・スワップの保証料率から弾き出される倒産確率は0.3%程度と、アメリカと並んで安定しているわけです。つまり、日本の政府債務は「危なくない」のです。
そして、ここで重要なことは、政府債務残高だけで財政の予算制約を計るのは間違いである、ということです。
少なくとも現在、海外の専門家の多くはそう考えています。
では、何で見るかと言うと、インフレ率です。
中央銀行の保有国債を別枠で考えられるならば、理論上は、すべての国債を中央銀行が買えば政府債務をゼロにできます。しかし、中央銀行が国債を買う場合には貨幣を新たに発行するわけですから、やりすぎると大幅なインフレに傾いていく可能性があります。だから、インフレ率が指標になるのです。
このように、財政規律は政府債務だけでなく、インフレ率なども含めて総合的に計るのがグローバルスタンダードです。そして、2022年3月現在の消費者物価指数で見たインフレ率はアメリカで8%、ヨーロッパで7%を超えていますので、欧米では経済政策を引き締める方向に向けて動き出しています。
この考え方で見れば、日本のインフレ率はグローバルスタンダードな目標の2%に遠く及びませんので、まだまだ財政出動が可能という判断になります。少なくとも中立金利が低すぎて金融政策が効かない状況(流動性の罠)から脱するまでは、財政出動によって政府が効果的にお金を使わないと、日本経済は良くならないでしょう。
繰り返しになりますが、海外では、デフレ脱却のためには金融緩和に加えて財政の積極的な出動が必須であるというのが常識にもかかわらず、日本では均衡財政主義が主流です。
政治家や官僚でも「プライマリーバランス黒字化が目標」と言っている人がいますが、これは現在の経済状況ではまったく意味がないんですね。
財務省に洗脳されて欧米で言われていることが理解できない政治家が多いんでしょうね。
統合政府の考え方でいけば、経済政策はインフレ率2%を指標として行うのが海外では主流のやり方であり、政府債務残高を気にして財政支出をケチったり増税しようとするのは大間違いだということです。
永濱さんをはじめとして多くの経済専門家がこのことを指摘しています。
政治家の皆様におかれましては、このことは基本中の基本として押さえたうえで、政策を実行していただきたいものです。
本日の記事は以上です。
☟『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』永濱利廣(講談社現代新書)