こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
復職してちょうど半年が経ちました。
休職期間半年、そのあと復職して半年です。
休職期間に入って以降とにかく猛烈に読書してみようと思い、書店やブックオフで気になった本は片っ端から買って読んできました。
そんななかの1冊、丹羽宇一郎氏の『仕事と心の流儀』を読んでいます。
著者の丹羽宇一郎氏は1939年生まれで、今年81歳。元伊藤忠商事株式会社会長、元中華人民共和国特命全権大使です。
先日の記事で本書を取り上げました。
氏が30代のころ致命的な失敗を犯し会社で大きな含み損を抱えたこと、その後の努力で含み損を解消し、のちに伊藤忠の社長まで上り詰めたエピソードを紹介しました。
この丹羽氏が本書でちょっと気になることを書いているので、以下に取り上げます。
いまの若者についてです。
「夢を持ちたいなら、自分の頭で考え、自分で行動しろ。」
自分(丹羽氏)が学生のころ(の就職活動)は「お宅を受けたいです」「はいどうぞ。試験は何日にあるので来てください」。試験を受けると人事部から合否の連絡がある。それだけでした。
しかしいまは、学生は「就職ポータルサイト」なるものに会員登録し、そのサイトを運営するエージェントの世話で入社している。
そして、丹羽氏は次のように書いています。
こうして新卒学生が会社へ入ってくるわけですが、「就職戦線を勝ち抜いた人間とはとても思えないような連中ばっかりだ」と知人は言っていました。
一方、中小企業はこうしたエージェントを使う金銭的余裕がないので、入社試験を受けに来るのは何から何まで自分で考えて準備してきた学生です。
だから、中小企業のほうがしっかりした若者がいるかもしれません。
ことほどさように、いまの就職戦線は昔とまったく違っています。
大企業に入ってくるのは癖のない「良い子」ばかり。
新入社員それぞれの癖を見抜いて生かすことなど、望むべくもない。
だから「同一労働同一賃金」という考え方が広がるのでしょう。
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丹羽氏は伊藤忠商事の重職を歴任し、中華人民共和国特命全権大使、内閣府経済財政諮問会議議員、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長、早稲田大学特命教授なども務めた「超一流」の経営者。
しかし、上の言葉には大変な違和感を感じざるを得ません。
「就職ポータルサイト」を利用して入社してくる若者は、自分の頭で考え、自分で行動していないという誤解があります。
現代の少子高齢化を背景とした労働市場の現状を知らずに、「就職ポータルサイト」を利用して入社してくる若者はダメだと言わんばかりの書きぶりです。
人材不足感が顕著になり、会社が人を選抜する局面から、人が会社を選抜する局面になりつつあります。
現状認識もまったく正確でない。
「就職ポータルサイト」に登録して企業の良し悪しを見極めなければ、低賃金でやりがいのない長時間労働のブラック企業で使い捨てにされてしまいますよね。
「だから同一労働同一賃金という考え方が広まるのでしょう」とは、まったく意味不明な見解です。
上野千鶴子さんと雨宮処凛さんの共著『世代の痛み 団塊ジュニアから団塊への質問状』からたびたび引用していますが、この本には次のようなやり取りがあります。
上野(千鶴子氏):わたしは、ロスジェネの貧困問題は、はっきり言って人災だと考えています。95年に日経連が「新時代の日本的経営」を打ち出し、政財官一体となって雇用柔軟化に舵を切った。非正規雇用に若者と女性を突っ込もうと、つまり、使い捨て労働力を増やしていい、と。わたしは、これは完全に「オヤジ同盟」の政策的合意だと思っています。使用者側の老獪さに、この20年、やられっぱなしだったという気がします。そこに、共犯者がいます。それが連合に代表される、労働組合界の団塊世代オヤジたちです。日本型雇用という自分たちの既得権さえ維持できるなら、後からくる若者と女性は割を食ってもいい、と。
雨宮(処凛氏):でもそんなことをしたら、子ども世代の雇用が不安定になり、その結果、自分たちの老後も危うくなるじゃないですか。
上野:そこが問題なの。その時、労働組合のオッサンたちは見通しを誤った。95年といえば、バブルが崩壊してから4年目。今は冷え込んでいるけれど、あと何年かしたら景気は回復し、自分たちの息子や娘もいずれ正規雇用に吸収されると思ったんでしょう。
雨宮:わたしも、いつか景気がよくなったら正社員になれるだろうという思いは、どこかで漠然とありました。
上野:その予測が完全にはずれた。まさか自分たちのジュニア世代がそのまま非正規雇用が固定してロスジェネになるとは思わなかった。
上野:「頑張れば報われる」なんて、どの面下げて団塊の世代が言えるのか、と思う。団塊世代は、頑張らなくても報われた世代なんです。自分の能力が高いからでも、人一倍努力したからでもなく、世代丸ごと親の世代より高学歴になれたし、生活水準も上昇した。経済が成長していく時代にたまたま生まれ合わせただけのことですから。
正規雇用と非正規雇用の格差を生むことになった経緯は上野さんの指摘の通りであります。
この正規と非正規の賃金格差を是正するために国が打ち出したのが、「同一労働同一賃金」の方針です。
能力のある人も能力のない人も同じ時間働けば給料が同じという意味ではありません。
丹羽さんはそこも誤解しているのです。
「自分の頭で考え、自分で行動しろ。」という丹羽さんの言葉は正しいと思います。
経営者としては「超一流」だったかもしれない。
しかし、氏の教養が、傾聴に値するものなのかどうか。
‟50年前の”仕事と心の流儀として本書を読み進めれば、何らかの示唆を与えてくれるかもしれませんが。
クセのある若者が望まれるのであれば、クセを持ってやろうじゃありませんか。
そして会社をかき回して、情報やノウハウだけ盗んで踏み台にして、もっと条件の良い会社を「就職ポータルサイト」で見つけて転職してやりましょう。
本日の記事は以上です。
☟『世代の痛み 団塊ジュニアから団塊への質問状』上野千鶴子、雨宮処凛(中公新書ラクレ)