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『早期退職時代のサバイバル術』小林祐児 著

こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。 

 

今回は、小林祐児さんの『早期退職時代のサバイバル術』です。

 

小林さんはパーソル総合研究所の上席主任研究員を務めておられます。

タイトルにある通り中高年の雇用問題を研究されています。

 

「働かないおじさん」

妖精さん

「粘土層」

 

窓際に座って何も仕事はしないけれど、年収は2,000万円以上もらっている社員に対して、「Windows2000」というあだ名もあるそうです。

なかなかのネーミングセンスですね。

 

小林さんは、こういった中高年層の問題を扱われています。

「働かないおじさん」をネタにするネットの記事はあるあるですが、そこはさすがパーソル総合研究所。

 

上辺だけの浅い議論を真っ向から否定しておられますね。

僕らのような働かないおじさん当事者も納得感のある、深掘りした議論を展開されています。

 

タイトルには「サバイバル術」とありますが、サバイバルの前に、まずは中高年の労働に関する問題を正しく認識することが必要だと提起されています。

 

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小林さんは、「働かないおじさん」問題はおじさん個人の問題ではなく、古くて新しい日本企業の「持病」だといいます。

 

日本社会は「70歳まで働くことが当たり前」の社会に舵を切っている。

 

会社からは「いらない」と言われ、国からは「働き続けてくれ」と言われる。この板挟みのような状況で働き続けるのが、今の中高年の労働者であり、これからの時代の私たち労働者です。

 

いま多くの日本企業では、「自律的にキャリアを築いていってくれ」という表面的な「意識改革」が先行しています。

「まずは従業員の意識を変えたい」「キャリア自律のような考え方を根付かせたい」といった相談が多く舞い込みます。

働いている労働者側からも「組織に頼らない生き方を」「会社に縛られないために副業を」「第二の専門性を」という掛け声が発せられています。

 

しかし小林さんは、日本の中高年が抱える問題は、啓発的な「意識改革」で解決するものでは全くないと言います。

 

「板挟み」状態にある中高年が、「キャリア自律」という掛け声をかけるだけでは、かえって会社にしがみつくことになると。

 

小林さんは、序章で2つ問題提起をされているんですね。

 

「働く」という人生まるごとの課題に対して、人材コンサルタントや経営者だけでなく、社会学や心理学や経営学や老年学のような様々な学問分野で研究されています。

 

それにもかかわらず、それぞれの専門領域に閉じこもっていて、あまりにも「視野が狭い」ために、専門書や論文をいくら参照してみても、痒い所に手が届いていないというのですね。

 

もう一つは、中高年ビジネスパーソンの課題を、すべて「本人の心理」「本人の意識」の問題に矮小化してしまっていることです。

 

「やる気・モチベーションがない」

「出世の道が絶たれてしまってスネている」

「過去にしがみついている」

 

小林さんはこれを「心理還元主義」と呼んでいます。

 

僕なんかまさに、「出世の道が絶たれてしまってスネている」んですが。

 

小林さんは次のように述べています。

 

こうしたキャリア自律を、会社側から自社の従業員に対して推進しようとするのは、人材マネジメントとしてはかなりの高難度になります。

会社の外に出ても自分の価値が低いとわかっている中高年に、自分のキャリアについて考えて行動するように促せば、できるだけ企業にしがみつこうとするということです。

結局のところ、日本の中高年に対する「キャリア自律」アプローチの最大の問題点は、実行的な制度上の工夫もこらさず、きちんとした予算もつけない、ただの「呼びかけ」が多い点です。

経済学者や経営者、評論家らがしばしば口にする「キャリア自律の呼びかけ」は、あまりにも空虚です。

 

小林さんは、中高年が抱える問題を、「働かない」「帰らない」「話さない」「変われない」という「四ない問題」というふうに整理して本書で議論を進めていきます。

 

上で述べたように本書では、中高年の問題を、単なる「本人の意識の問題」で片付けてはならないと言い、また単なる「キャリア自律の呼びかけ」だけでは、世代を超えて「働かないおじさん」問題が繰り返されるだけだとしています。

 

本書はこのような空虚な呼びかけを排し、企業の人材マネジメントの仕組みづくりこそ優先すべきだという興味深い内容となっています。

 

本日の記事は以上です。

 

☟『早期退職時代のサバイバル術』小林祐児 著(幻冬舎新書