仕事したくない事務職のオッサンのビジネスブログ

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チャルディーニの「影響力の武器」

こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。 

 

貧困、ストレス社会、孤独、過労死、自殺。

生きづらい現代のビジネスマン、全日本人必読の書、橘玲さんの『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』。

 

カーネギーデヴィッド・リカードダーウィンから勝間和代まで、数多くの学者や著名人の言説からヒントを得て、弱者がサバイバルするための戦略を解き明かす。

 

なぜ我々は不幸から逃れられないのか?

幸福とは何か?

 

『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』、『貧乏はお金持ち』と並んで、橘さんの代表的な作品です。

 

「伽藍を捨ててバザールに向かえ!」

「恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!」

 

本書の終盤にこの意味が明かされます。

この本は2010年発行ですからもう10年以上前のもので、今では広く一般化している論点も書かれていますが、それでも必読です。

 

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このなかで橘さんは、市場と交易のルールが支配する「貨幣空間」に生きる場所を見い出すという提案をしています。

 

本書でページを大きく割いて紹介されているのが、社会学者ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』です。

マーケティングに詳しい人は常識でしょうが、その他のビジネスマン、全日本人にも必須の知識です。

 

橘さんの言葉を借りて、チャルディーニの「影響力の武器」をまとめておきます。

チャルディーニは、自身が「なぜ騙されてしまうのか」ということに興味を持って、「心理的な要因を利用してYESと答えさせる技術(承諾誘導)」について研究しようと考えました。

 

返報性(互酬性)

「なにかしてもらったらお返しをしなくてはいけない」という人間社会に普遍的な規則・習慣だ。「影響力の武器」のなかでも、最も強力なものだ。

お中元やお歳暮を例に出すまでもなく、僕たちの社会に返報性のルールはあまねく行き渡っている。人から親切にしてもらってお返しをしないと、僕たちは生理的に不快になる。親切にしたのにお返しがないと、もっと不快になる。

これは人間だけの特徴ではなく、チンパンジーや吸血コウモリにも返報性のルールは報告されている。それは遺伝子にプログラムされ、行動を支配する。

 

権威

医薬品のコマーシャルに、白衣を着たタレントがしばしば登場する。とりわけそのタレントがテレビドラマで医師の役を演じていたりすると、CMは素晴らしい効果を発揮する。視聴者は、彼が専門家のふりをしていることをよく知っているにもかかわらず、その商品を権威ある医師が勧めたものと錯覚するからだ。
ひとが肩書きにこだわるのは、その効果をよく知っているからだ。

 

希少性

トキはかつてはありふれた鳥で、田畑の作物を荒らすとして忌み嫌われ、乱獲の対象となった。ところが佐渡島にわずか数十羽が生息するだけになると突然、その優雅な姿が人々の心を捉え、2003年に最後の日本産トキが死亡すると国じゅうが悲しみに包まれた。
なぜこれほどまでに人々の行動が変わったかというと、日本人がトキの美しさに目覚めたからではなく、その存在が希少になったからだ。僕たちは、希少なものには価値があると無条件に思い込むようにできている。

 

好意

自宅でホームパーティーを開き、タッパーウェアなどを販売するアメリカ生まれのビジネスが日本でも一世を風靡した。大きな利益を生み出した理由は、商品の素晴らしさだけではなく、友人関係を利用した販売手法にある。友達は好意であなたをパーティに誘い、好意であなたにタッパーウェアを勧める。社会的な生き物である人間は、親しい人の誘いを断ることができない。
営業の極意は、いかに顧客に好意を持たせるかだ。人は、自分に似ている人に好意を抱く。スーパー営業マンは絶世の美女や白面の美男子ではなく、誠実そうで平凡な容姿をしている。

 

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社会的証明

「みんながやっていることには無条件で従う」という心性だ。この社会的証明がいかに強力かは、繁華街で空を見上げて立っているだけで簡単に証明できる。最初はみんな、あなたのことを変な奴だと避けて通るだろう。だがそのうち、あなたの真似をして空を見上げる人が現れる。その人数が一定数を超えれば、通行人はみんなの足を止めて空を見上げるようになる。
ベストセラーやヒット曲が生まれるのも同じ理屈だ。みんなが読んでいる本や、みんなが聴いている曲は、それだけでさらに多くの人を惹きつける。このようにして「ハリーポッター」のような超ベストセラーが誕生する。

 

コントラスト効果

新車を買うと、カーステレオやカーナビ、アルミホイールやスポーツタイヤを勧められる。どれも高額商品だが、車本体の価格と比べると割安に感じられるので、ついつい財布のひもがゆるんでしまう。このコントラスト効果は、販売マニュアルの基本中の基本だ。
中古車のディーラーでは、最初に魅力のない車を何台か見せておいて、その後で割高だがそこそこの車を案内する、という方法もよく使われる。宝石店やブランドショップでは逆に、とうてい手の届かない高額商品を最初に見せて、クレジットカードの分割払いならなんとか買えそうな商品を勧める。いまだに僕たちは、こんな古臭い心理トリックに簡単に騙されてしまう。

 

勝者の呪い

オークションには「勝者の呪い」という効果が働き、売り手が有利になることが多い。景気が過熱すると、絵画や骨董品、不動産からワールドカップの放映権まで様々なものが経済合理性を超えた価格で取引されるようになる(これがバブルだ)。人の欲望が最高潮に達するのは、他人と競争しているときだ。バーゲン品に群がる主婦からMBAを持つ百戦錬磨のビジネスマンまで、「誰かがそれを欲している」というだけで、セリに出された商品(粗悪な洋服や赤字だらけの会社)にものすごい価値があると錯覚してしまう。

 

コミットメントと一貫性

チャルディーニの挙げた影響力の武器の中で、返報性と並んで興味深いのが「コミットメントと一貫性」だ。これは簡単にいうと、「一度決めたことは取り消せない」という法則だ。
社会の中で生きていくためには、約束を守ったり、言動に筋が通っているのはとても重要だ。会うたびにいうことが違うようでは、誰も信用してくれない。「前の話と違うじゃないですか」と言われると、僕たちはとても動揺する。一貫性がない→信用できない→社会的に価値がない、という無意識の連鎖が働くからだ。
だから僕たちは過去の判断をなかなか覆せないし、その判断と現状が矛盾することに耐えられない。要するに、失敗を認めることができない。
人がいかに容易に一貫性の罠に陥るかは、オウム真理教の信者にその典型を見ることができる。周囲の反対を押し切り、全てを捨てて宗教の世界に身を投じた以上、彼らは無意識のうちにその決定を正当化する強い圧力を受けている。そのため拉致・殺人や毒ガス製造などの犯罪が明らかになり、論理的な思考では一貫性を保つことができなくなると、ついには現実世界を否定し、すべてはフリーメーソンの陰謀だと確信するに至る。こうなると、もはやどのようなコミュニケーションも成立不可能だ。
マスメディアはこれを「オウムの洗脳」と報じたが、彼らは自分で自分を洗脳している。この状態が恐ろしいのは、決して洗脳を解くことができないからだ。他人から注入された信念は否定することができるかもしれないが、自分で自分を否定するのは不可能だ。
いったんコミットメントしてしまうと、人はそこから逃れられなくなる。これはカルト教団だけの話ではない。恋愛でも就職でもマイホームの購入でも、僕たちはきわめて簡単に自己洗脳状態に陥り、過去の選択を正当化してしまうのだ。

 

橘さんが主張するように、煩わしい「愛情空間=政治空間」から離脱して、シンプルでフラットな「貨幣空間」に生きようと思うなら、こういったマーケティングの知識は不可欠かもしれません。

 

本日の記事は以上です。