こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
坂本貴志さんの著書『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』。
働き続けることへの迷いや不安に、数々の示唆を与える書物です。
坂本貴志さんはリクルートワークス研究所研究員・アナリストです。
この本はシニアの働き方について、厚生労働省やリクルートワークス研究所の研究データを多数分析して、その実相に迫ろうという内容です。
なぜこの本を手に取ったかというと、僕はもうアラフィフで、シニアに片足突っ込んでいるとともに、仕事がしんどくてしんどくてたまらないからです。
これはいったいどういうことなのか?
これを少しでも解明したくてこの本を読んでみようと思ったわけです。
この本は定年後の仕事について書かれた本ですが、これを読むべきなのは定年後のシニアではなく、仕事に脂がのっている人や、何となく踊り場を迎えて仕事に疑問や不安を抱えた、30~50代の現役バリバリの人たちなんですよ。
-PR-
そういう人たちにとって、本書の一番の肝となるのが「50代で就労感は一変する」という章なんです。
私たちはなぜ働くのか?
多くの人が抱えるこの難題に真正面からデータで向き合ったのが、本章です。
心理学者のドナルド・E・スーパーという人が、仕事に対する価値観を体系的にまとめているそうです。
スーパーの研究をもとにリクルートワークス研究所が「シニアの就労実態調査」を行っています。この調査が超重要です。
仕事から得られる価値は、「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」という6つに分類されます。
▶「他者への貢献」人の役に立てること、社会の役に立つこと、仕事において自身の責任を果すこと、会社の成長に貢献すること
▶「生活との調和」無理なく仕事ができること、仕事をする場が快適であること、自分自身が望んだ生活をできること、幸せな家庭生活を実現すること、職業が安定して将来に不安のないところで働くこと、効率よく対価を得ること、毎日働くことで生活のリズムがつくこと、気の合う仲間と一緒にいること
▶「仕事からの体験」わくわくするような体験をすること、さまざまな人と交流する機会があること、いろいろな種類の活動をすること、新しいことを発見したり発展させた梨考え出したりすること
▶「能力の発揮」自分自身の専門性を高めること、自分の能力を活かせる仕事をすること
▶「体を動かすこと」仕事において体を使って活動すること、一生懸命に体を使って仕事をすること
▶「高い収入や栄誉」昇進できること、高い収入を得ること、大きな意思決定ができるような権限権威を持つこと
仕事に対する価値観が網羅されていると思います。
自分自身が上の分類のどれに当てはまるのか、まずよく考えてみましょう。
リクルートワークス研究所が行った調査の結果は驚くべきものでした。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ポジティブな価値を感じながら仕事をしている年代は、20代と70代です。
30代から60代までの現役世代の多くの人が、仕事に有意義な価値を感じない、つまり仕事に全くやりがいを感じていないというのです。
大部分の人たちが、「仕事はただしんどいだけだ」と思っているんですよ。
グラフにすると、大きな谷型カーブを描いています。
そのやりがい喪失の谷底にいるのが、50代なんです。
多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた20代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが50代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。
仕事に成功して表舞台に出ている人というのはほんの一握りです。
人の上に立ち仕事がノッてる人が、いろんなメディアの表舞台に登場します。
そういう人たちというのは、働いている人たちの「やりがい搾取」という犠牲の上に成り立っている成功例なのか。
いや、30代から60代までの現役世代で、人の上に立ち仕事がノリにノッてる人というのは、ほとんど皆無なのだということがデータから分かります。
30代から60代までの現役世代というのは、得られる報酬に対して、あまりにも重責・重労働なんです。
あまりにも報酬が低すぎる。
それに、上で見てきたように、報酬以外の仕事で得られる価値もほとんど無い。
そういう状態で、30年も40年も仕事人生を過ごしているのが現実なのではないか。
繰り返しになりますが、調査結果においてこのような仕事に対して最もしんどい谷底を迎えるのが50代前半だということです。
なぜ人は50代で仕事に対して意義を失い、迷う経験をするのか。これはつまるところ、定年を前にして「高い収入や栄誉」を追い求め続けるキャリアから転換しなければいけないという事実に、多くの人が直面しているからだと考えられる。他者との競争に打ち勝ち、キャリアの高みを目指したいという考え方をどのようにして諦めることができるか。それが、定年後に幸せな生活を送れるかどうかを大きく左右するのである。
坂本さんは本書の後半において、50代を境にして仕事に対する価値が急上昇していくということを調査に基づいて明らかにしており、これがまさに本書のメインテーマの部分となるわけですが、ここでは触れないので是非読んで考えてもらいたいですね。
しんどい30代、40代、そして最も仕事人生の壁にぶち当たる50代。
仕事に何を求めるかという観点でみたとき、50代は大きな転機となる年齢なのである。
人によっては30代や40代でそういう転機を迎えているかもしれません。
遅かれ早かれ、誰でもそういう転機と向き合っている。
転機と向き合って、それを乗り越える経験が必ず必要なのだということが本書から分かるんですね。
本日の記事は以上です。
☟『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』坂本貴志 著(講談社現代新書)