こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
また雇用問題、年収格差問題について書きます。
先日、「普通」の家庭が「普通」の豊かさを享受できる世の中にならなければならないという趣旨の記事を書きました。
世帯主や生計を維持する者がずっと年収300万円では家も車も買うことはできません。
理想かもしれませんが、正規や非正規を問わず定職に就いているのであれば、車を買って結婚して家を持って子を成人するまで育て上げるという将来のヴィジョンを当たり前に描けるような世の中にならなければなりません。
しかし最近次のような最高裁の判決が出ました。
判決で、最高裁判所第3小法廷の宮崎裕子裁判長は「大学では、正規の職員は業務内容の難易度が高く、人材の育成や活用のために人事異動も行われ、正職員としての職務を遂行できる人材を確保する目的でボーナスが支給されている。一方、アルバイトの業務内容は易しいとうかがわれる」と指摘しました。
判決では、要するに非正規社員は簡単な仕事なので給料は安くても構わないと判断したことになります。
これに対して、労働組合側は次のようにコメントしています。
判決について、小西純一郎副委員長は「企業側が、今回の判決を活用して、『アルバイトにはボーナスはいらないとか退職金はいらない』と言いだすと、非正規にとっては非常に大変だと思う。よくない流れを作ってくれたなと思います」と懸念を示しました。
労組のコメントのとおり、よくない判決です。
「同一労働同一賃金」を持ち出して、非正規雇用は低賃金で構わないというのは本末転倒です。
僕はこれまで正規雇用と非正規雇用について何度か書いてきましたが、難しい問題です。
ところで、冒頭でなぜ年収300万円というのを一つの目安にしたのか。
過去に森永卓郎さんの『年収300万円時代を生き抜く経済学』を読んだことがあり、年収300万円という金額が念頭にあったからです。
本書だけでなく、至る所で「年収300万円」というのが貧富を分けるラインとして用いられているようです。
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今回あらためて読み返してみました。
本書で森永さんは次のように書いています。
これまでの一億総中流社会が崩れて、一部に大金持ちが現れる一方で、一般のサラリーマンの年収が300万円台に近づいていくと予測したところ、その通りになった。
1998年の時点で27.5%に過ぎなかった非正社員の割合が、34.6%にまで高まっていたのだ。
就業形態の多様化に関する総合実態調査では、月給10万円未満が37.2%、月給10万円以上20万円未満が40.8%と、合わせて8割の非正社員の月給が20万円に届いていなかったのだ。
年収300万円どころか、年収100万円台の人が、3人に1人以上になった。
フリーターは500万人近くに増えた。
学校にも行かず、就職もせず、教育訓練も受けていないニートと呼ばれる若者もすでに85万人に達している。
この本は驚くべきことに2003年に初版発行です。
今から20年近くまえに書かれたものです。
20年前には、すでに相当貧困化が進んでいたことになります。
森永さんがこのように書いている背景には、以下の政治的な経緯があります。
バブル崩壊(1991年から1993年までの景気後退期)のあと、1995年、日経連(今の経団連)が「新時代の日本的経営」を発表した。
政財官一体となって雇用柔軟化に舵を切った。つまり非正規雇用に若者と女性を突っ込んで、使い捨て労働力を増やしていいということになった。
バブルが崩壊して景気と就職率が急落するなか、1999年、小渕内閣のとき派遣業務の原則自由化が決定される。
そして2001.4~2006.9までの小泉内閣。
小泉内閣のブレイン、竹中平蔵はネオリベラリスト(新自由主義者)だった。
2004年に、製造業の派遣解禁、派遣労働の期間制限撤廃など重大な政策決定がなされた。
これは従来、専門性の高い業務のみに認められていた派遣労働者を人件費の高い正規社員の代替として常用するもので、これが後日、正規雇用と非正規雇用の格差を生むことになった。
この間、就職氷河期世代が生み出された。
就職氷河期世代とは、2000年前後に大学を卒業した40代後半から30代後半くらいまでを指す。
1999年から2004年くらいの間に大学を卒業した人の就職率は7割を切っていた。
しかし小泉首相は、2005年の郵政改革選挙で「自民党をぶっ壊す」「既得権益をぶっ壊す」という公約を掲げた。
これにフリーター層はもちろん世間がこぞって自民党に投票した。
既得権益の温存と若者の雇用破壊は完全に隠蔽されていた。
既得権益をぶっ壊すと言って、正規雇用までぶっ壊されてしまった。
森永さんの指摘と重ね合わせると、非正規雇用や年収格差の問題は新しいものではなくバブル崩壊にその根源があり、20年近く放置されてきたものだということが分かります。
最近では少子高齢化により、業種によっては人手不足が進行しているかもしれないので、フリーターやニートが増加しているかどうかは分かりません。
しかし日本に中流層が多いというのはもう過去の話です。
森永さんの『年収300万円時代を生き抜く経済学』は、今読んでも全然古くない。
冒頭で「非正規職員ボーナス退職金なし」という最高裁判決に触れましたが、未だに非正規雇用や年収格差の問題は解決していないどころか、さらに悪化しているだろうということを表しています。
本日の記事は以上です。
☟『年収300万円時代を生き抜く経済学』森永卓郎(ゴマブックス)