こんにちは、50代オッサンtrrymtorrsonです。
先日「新しい資本主義実行計画2025年改訂版」について書きまして、今回はその続きを。
「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」というワードが出ていて気になったので。
山田久法政大学経営大学院教授が提唱しているもので、経営コンサルタントの冨山和彦氏が、『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』という本を出して話題になっています。
「実行計画2025年改訂版」(以下、実行計画)のなかで、「リスキリング」と並んで、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」は、重要なキーワードです。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーについて記載している部分を抜粋します。
~地域で活躍する人材の育成と処遇改善~
国民生活を支えている就業人口の約6割を占める現場人材の持続的な賃上げを実現するためには、高度なスキルを身につけて生産性を高めつつ、処遇を含め、より魅力ある職業としていくことが必要である。アドバンスト・エッセンシャルワーカー(デジタル技術等も活用して現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカー)の育成や、AI等の技術トレンドを踏まえた幅広い労働者のリ・スキリング、医療・介護・保育・福祉等の現場での公定価格の引上げに取り組むことを通じ、全国津々浦々のそれぞれの地域で、労働者個人が、自らの意思に基づき、活躍できる環境を整備する。 (4頁)
(1)アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成
社会の様々な機能を現場で支えるエッセンシャルワーカーについては人手不足がより一層深刻化し、サービスの持続性自体が課題となってきている。
人手不足の現場(自動車運転業(物流・人流)、建設・土木業、製品・機械等の製造・加工業(修理・検査を含む)、介護業、観光業、飲食業等)で、デジタル技術の活用を含めて、現場人材のスキルが正当に評価され、そうした者の実際の処遇が改善されることが重要である。そのため、既存の公的資格ではカバーできていない産業や職種におけるスキルの階層化・標準化のために、厚生労働大臣が外部労働市場にも通じる民間検定を認定する団体等検定制度の普及と活用を進めるべく、業所管省庁から、業界団体等を通じて同制度の積極的な活用に向けた働きかけを強化し、そうした業種における現場人材の育成につなげる。併せて、建設キャリアアップシステムなどを参考に、業界団体等と連携し、技術・技能や経験を客観的に評価し、処遇につなげる仕組みの導入を促進する取組を進め、能力・経験に応じた処遇改善につなげていく。 (24頁)
3.産業人材育成プラン
日本の人材供給の現況を俯瞰すると、例えば、工業高校と高専卒の学生に対する求人倍率は20倍であり、強い労働需要に応えられていない。ドイツなど主要国と比較して大学の理工系学生の割合が少ないまま、四年制大学で文系を育てることに相当の力を割いているなど、わが国の経済・社会のニーズから乖離しているとの指摘もある。
今後、大きな産業構造変化により、就業構造にも大きな変化がもたらされることが想定される。具体的には、①DXによるサービス化等で高付加価値化する「製造業X(エックス)」化、②情報通信業・専門サービス業の成長産業化、③省力化投資を活用して高付加価値化する「アドバンスト・エッセンシャルサービス」化といった産業構造の変化に応じた就業構造の変化を踏まえた人材育成が求められる。
こうした転換を国家戦略として捉え、地域の産業構造の特色を踏まえて、アドバンスト・エッセンシャルワーカーを含む産業人材のニーズを分析した上で、必要な教育プログラムの整備を進めるとともに、産業界から教育機関への資金提供や共同での教育プログラム作りなどの流れを作り、加速させていくため、ここに「産業人材育成プラン」を策定し、関係省庁が連携して取り組んでいく。(66頁)(中略)専門学校においても、今後の急激な技術変化を踏まえて、教育内容を迅速にアップデートするとともに、アドバンスト・エッセンシャルワーカー等を養成するリカレント教育のプログラム開発等を支援する。(67頁)
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アドバンスト・エッセンシャルワーカーとは何か?
実行計画には、「デジタル技術等も活用して現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカー」と説明されています。
その前に、そもそも「エッセンシャルワーカー」とは何でしょうか?
下の記事で書きましたが、エッセンシャルワーカーとは次のような分野に携わる人のことだと言われています。
▶ 健康・医療・介護
▶ 教育・保育
▶ 主要な公共サービス
▶ 政府機関・地方自治体
▶ 食品およびその他の日用品・衛生用品の取扱関係者
▶ 公安および国家安全保障
▶ 交通機関
▶ 公益事業インフラ、通信インフラ、金融業
僕の考えでは、無くなったら困る仕事をしている人たちは、すべてエッセンシャルワーカーと言っていいでしょう。
実行計画では、人手不足がとりわけ深刻と考えられる12業種が挙げられています。
飲食業、宿泊業、小売業、生活関連サービス業(理美容業、クリーニング業、冠婚葬祭業)、その他サービス業(自動車整備業・ビルメンテナンス業)、運輸業、建設業、医療、介護・福祉、保育、製造業、農林水産業
「人手不足で困っている」つまり、「エッセンシャルワーカー」ということですよね。
そこで、人手不足を解消するために、「デジタル技術等も活用して現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカー」の確保が必要だという話です。
しかし、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」というワードだけが独り歩きして、理念先行で具体例が不足しているのではないでしょうか?
アドバンスト・エッセンシャルワーカーの具体例として、どのようなものが考えられるでしょうか?
いくつか考えてみたいと思います。
1.医療分野の薬剤師
ポリファーマシー(多剤併用)の解消や健康格差の是正。
セルフメディケーション支援や予防医療への積極的な関与。
AIを活用した調剤業務の効率化や患者データの統合分析。
医療設計やアウトカム評価など、業務の上流・下流への関与。
多職種連携スキルの向上と地域包括ケアへの進出。
2.介護福祉士
高度なリーダーシップと専門知識を活かし、介護事業所を運営する。
高齢者施設でのケア業務に加え、ICTを活用したケアプランの最適化。
地域コミュニティとの連携を通じた包括的な支援。
3.製造業におけるスマートファクトリーの現場リーダー
製造業では、AIやロボティクスを活用したスマートファクトリーが進展。
現場リーダーは、デジタル技術を駆使して生産ラインの効率化を実現し、製品の品質向上に貢献する。
IoTセンサーを活用したリアルタイムの生産管理。
ロボットと人間の協働を最適化するプログラム設計。
労働者の安全性を確保しつつ、生産性を向上させるリーダーシップ。
技術革新を現場に導入し、従業員のスキルアップを促進することで、競争力を維持するプロフェッショナルとしての役割。
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4.飲食業におけるデジタル化を推進する飲食店マネージャー
飲食業では、注文システムのデジタル化やAIによる在庫管理を導入することで、効率的な店舗運営を実現しているマネージャーが注目される。
AIを活用したメニューの最適化(顧客の嗜好に基づく提案)。
デジタル予約システムの導入による顧客体験の向上。
従業員の教育とリスキリングを通じたサービス品質の向上。
デジタル技術を活用し、顧客満足度を向上させるとともに、業務効率を改善する。
5.小売業におけるデータ分析を活用する店舗運営者
小売業では、店舗運営者が顧客データを分析し、商品配置や在庫管理を最適化することで売上を伸ばす。
顧客の購買データを基にした商品ラインナップの調整。
AIを活用した在庫管理システムの導入。
店舗スタッフの教育を通じたサービス向上。
データドリブンな意思決定により、効率的な店舗運営を実現する。
6.教育現場においてICTを活用する教師や塾講師
ICTを活用してリモート授業や個別学習プログラムを提供する。
AIを活用した個別学習プランの設計。
生徒の学習データを分析し、適切な指導方法を提案。
地域社会との連携を通じた教育の質向上。
デジタル技術を活用し、生徒の学習成果を最大化する教育モデルを構築する。
いくつか例を挙げてみました。
冨山さんの著書『ホワイトカラー消滅』では、必要不可欠な高性能ホワイトカラーだけが生き残り、「漫然とホワイトカラー」、「なんちゃって中間管理職」は淘汰されると論じています。
なんとなく不愉快な書きぶりですが、今後のトレンドをつかんで今から行動できるかが問われるでしょう。
本日の記事は以上です。
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