こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)は、もっとも著名な経済学者の一人です。
彼は次のように予測していたそうです。
「2030年に1日3時間、週15時間労働すれば十分に生活できる社会が実現する」
また、1990年代、財政政策として大型の公共事業を行ってきたのは、ケインズの財政政策理論がベースになっています。
そんなケインズですが、「美人投票」理論というユニークな考え方を著書に書いています。
ケインズが提唱した「美人投票」(Keynesian Beauty Contest)は、金融市場や投資行動を説明するための比喩として広く知られています。
この概念は、彼の著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)の第12章で紹介されました。
ケインズは、株式市場における投資家の行動を、新聞の「美人投票コンテスト」に例えました。
このコンテストでは、参加者が100枚の写真の中から「最も美しい」と思う6枚を選びますが、勝者は「自分が美しいと思う写真」を選んだ人ではなく、「他の参加者が美しいと思うだろう」と予測して選んだ人に賞が与えられる仕組みです。
この例えのポイントは、参加者が単に自分の好みで選ぶのではなく、他の参加者の平均的な好みを予測し、それに基づいて選択を行うという点です。
さらに、他の参加者も同じように「他人の好み」を予測して行動するため、予測の階層が深まります。
ケインズはこれを「第3次、第4次、さらにはそれ以上の推測」と表現しました。
金融市場への応用
ケインズの「美人投票」の概念は、特に株式市場における投資行動を説明する際に用いられます。
以下のような特徴があります。
投資家は、株式の「本質的な価値」ではなく、「他の投資家が価値を見出すだろう」と予測する銘柄を選ぶ傾向があります。
この行動は、短期的な価格変動を引き起こし、しばしば市場の非効率性や投機的バブルの原因となります。
例えば、ある銘柄が「人気が出そうだ」と多くの投資家が考えれば、その銘柄の価格は実際に上昇します。
この現象は、価格が必ずしもその銘柄の内在的価値を反映していないことを意味します。
実験と実証
ケインズの理論は、実験的にも検証されています。
例えば、ある研究では、参加者に「最も可愛いと思う動物の動画」を選ばせるグループと、「他の参加者が最も可愛いと思うだろう動画」を選ばせるグループに分けたところ、後者のグループは自分の好みを抑え、他人の選択を予測する行動を示しました。
この結果は、ケインズの理論を支持するものとされています。
現代における意義
「美人投票」の概念は、現代の行動経済学や行動ファイナンスの基礎理論の一つとしても重要です。
特に、以下のような場面で応用されています。
投機的バブル:市場参加者が他人の行動を過剰に意識することで、価格が実際の価値から乖離する現象。
マーケティングや選挙戦略:人々が他人の意見を予測して行動する傾向を利用した戦略設計。
ゲーム理論:他者の選択を予測する「推測の階層」を分析する際のモデル。
【引用元:Wikipedia】
「美人投票」が投機的バブルに与える影響
ジョン・メイナード・ケインズの「美人投票」理論は、金融市場における投資家の行動を理解するための重要な枠組みを提供します。
この理論は、投資家が自分の好みではなく、他の投資家がどのように考えるかを予測して行動することを示しています。
この行動が、投機的バブルの形成や崩壊にどのように寄与するのでしょうか。
1.投資家の心理と集団行動
「美人投票」の概念では、投資家は他者の選好を予測し、それに基づいて投資判断を行います。
これは、個々の投資家がファンダメンタルズに基づく判断を行うのではなく、他者が選ぶであろう銘柄を選ぶことを意味します。
このような行動は、以下のような影響を及ぼします。
価格の非合理的な上昇:投資家が「人気がある」と考える銘柄に集中して投資することで、その銘柄の価格が実際の価値を超えて上昇することがあります。
これは、他の投資家がその銘柄を買うと予測することから生じる「自己実現的予言」となります。
バブルの形成:このような集団行動が続くと、価格は実際の企業価値から乖離し、投機的バブルが形成されます。
バブルは、投資家が「他の人が買うから自分も買う」という心理に基づいて拡大します。
2.バブルの崩壊
投機的バブルが形成されると、次第に市場はその持続可能性に疑問を持つようになります。以下のような要因がバブルの崩壊を引き起こすことがあります。
市場の認識の変化:投資家が「美人投票」の結果として選ばれた銘柄が実際には過大評価されていると気づくと、売りが集中し、価格が急落します。
このような状況では、投資家は他者の行動を予測することができず、パニック売りが発生することがあります。
情報の非対称性:市場参加者が持つ情報が不均等である場合、特定の銘柄に対する過剰な期待が崩れると、急激な価格変動が生じることがあります。
これは、投資家が他者の行動を過信し、自らの判断を軽視することから生じます。
3.結論
ケインズの「美人投票」は、金融市場における人間の心理的要因や集団行動の影響を鋭く捉えた比喩です。
この理論は、投資家が単に合理的な判断をするだけでなく、他者の行動を予測し、それに基づいて意思決定を行うという現実を反映しています。
この考え方は、現代の経済学やファイナンスの分野でも広く活用されています。
「美人投票」の理論は、金融市場における投資家の行動がどのように投機的バブルを形成し、また崩壊させるかを理解するための重要な視点を提供します。
投資家が他者の選好を予測して行動することで、価格は実際の価値を超えて上昇し、最終的には市場の認識の変化によって急激な崩壊を迎えることがあります。
このようなメカニズムは、金融市場の非効率性や投機的行動を理解する上で不可欠です。
このように見てくると、日本人が過剰に「空気を読む」のは、ケインズの「美人投票」と重なるものがあります。
多数が取るであろう行動を予測して同調するというか。
日本人はある意味で、非常に経済合理的に行動していたのですね。
評論家の宮崎哲弥さんは自著でケインズの「美人投票」を引用して、次のように書いています。
「欲望の社会性」
「個の欲望は常に社会によって方向づけられる」
「投機で儲けるためには、自分の欲望に固執するよりも、大勢の欲望がどこに向かっているかを知り、それに同調することが肝要である」
「欲望は個人的なものではない。これはマーケティングの鉄則でもある」
本日の記事は以上です。
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