こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
「エキタス(AEQUITAS)」という、若者の賃上げ運動があります。
2015年ごろから活動を開始し、現在も「最低賃金1500円」運動を展開しています。
この活動をまとめたのが、かもがわ出版の『エキタス』です。
活動家たちの生々しい心の叫びと、今野晴貴さんらによる活動の背景考察が読めます。
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本書の中で実に読みごたえのある論考を書いているのが、今野晴貴さんです。
労働問題や貧困問題について造詣が深く、労働問題を扱うNPO法人「POSSE」の代表理事を務め、2012年に『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)を出版。
本書は第13回大佛次郎論壇賞を受賞し、「ブラック企業」で「ユーキャン新語・流行語大賞トップテン」を受賞しました。
いま僕が一番注目している有識者の一人です。
先日はこの『エキタス』から今野さんの論考を引用しました。
労働者の所得の低下や格差・貧困の拡大が指摘されているのに、社会保障制度がまったく機能していない。
雇用保険制度が有効活用されていない。
さらに今野さんは、教育費の増大と住宅費の増大に対しても国の保障が脆弱なことを指摘しています。
国立大学の授業料が1975年から15倍に増加。私立大学では5倍に。
年収400万円ほどの平均的な世帯では、税金と教育費を負担すると生活保護水準以下の収入になってしまう。
しかし、無理をして大学まで行かせないと就職先がないんですね。
各国の大学教育の公的支出(対GDP比)を見ると、日本は公費負担が著しく低く私費負担に頼っている。
このため、大学への進学を奨学金に頼る学生が急増しています。
奨学金の返済負担が重くのしかかっているにも関わらず、学生たちは安定した就職先を見つけられないという状況になり、社会問題化しています。
日本では住宅政策も手薄です。
海外では公営住宅が整備されているのに日本は戦後から相変わらず住宅ローンによる住宅の取得が主流です。
住宅は社会保障の対象として考えられていなかったんですね。
そのせいで、公営住宅の応募倍率は東京で30倍、全国平均で9倍。
公営住宅は高齢者や障害者に優先されるので、若者が公営住宅に住めない事態となっています。
さらに、日本には公的な住宅手当制度というものが存在しません。
若者は安い賃金を家賃で全部持っていかれるか、実家から出て独立することができないというところまで追い込まれています。
友人宅に居候かネットカフェ難民というホームレスの若者も少なくありません。
こういう状況に悪質業者がつけ込み、名目上「レンタルオフィス」や「貸倉庫」となっているところに若者を住まわせようとしています。
今野さんが指摘する教育費の問題と住宅の問題は深刻です。
将来の日本を支える若者に国はまったく投資や援助をしていません。
日本国憲法第25条は、いわゆる「生存権」について定めています。
1.すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
これだけ問題が山積していると、生存権が保障されていると言えるのか怪しいですよね。
日本の労働者の多くが低賃金に苦しむ。
生活保護制度や雇用保険制度がセーフティーネットとして機能せず、教育や住宅への公的支出もほとんど無い。
これではとても先進国と言えませんね。
本日の記事は以上です。
☟『エキタス 生活苦しいヤツ声を上げろ』今野晴貴、雨宮処凛 著(かもがわ出版)
☟『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴(文春新書)