こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。
「エキタス(AEQUITAS)」という、若者の賃上げ運動があります。
2015年ごろから活動を開始し、現在も「最低賃金1500円」運動を展開しています。
この活動をまとめたのが、かもがわ出版の『エキタス』です。
活動家たちの生々しい心の叫びと、今野晴貴さんらによる活動の背景考察が読めます。
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本書の中で実に読みごたえのある論考を書いているのが、今野晴貴さんです。
労働問題や貧困問題について造詣が深く、労働問題を扱うNPO法人「POSSE」の代表理事を務め、2012年に『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)を出版。
本書は第13回大佛次郎論壇賞を受賞し、「ブラック企業」で「ユーキャン新語・流行語大賞トップテン」を受賞しました。
いま僕が一番注目している有識者の一人です。
今野さんは『エキタス』のなかで、労働者の所得の低下や格差・貧困の拡大、非正規雇用やワーキングプアの問題、ブラック企業など数々の社会問題を指摘しています。
こういった低賃金に起因する諸問題とともに、今野さんは日本の社会保障制度がいかに機能していないのかをあぶり出しています。
そのなかで、あまりメディアで取り上げられていない雇用保険の問題を今野さんは指摘しています。
失業を保障しない雇用保険
失業時の生活を保障する雇用保険制度の利用率は極めて低い。2002年以降、受給者割合は30%を割り込み、2013年以降は19%台で推移している。給付期間が短いために、長期失業者には給付されていないのだ。そのため、雇用保険を受給できない失業者が大量に存在する。特に、若者は仕事を見つけやすいという想定があるために、給付期間が短く設定され、そのために派遣労働など「すぐ働ける」劣悪な職業に誘導されている。
さらに、雇用保険は、会社側の問題で退職した場合は「会社都合退職」とされ、労働者の問題で退職した場合は「自己都合退職」と分けられている。そして、後者の場合、「自ら辞めた」とみなされるために、受給制限がかけられたり、給付期間が短くさせられたりするなどのサンクションが課せられる。具体的には3ケ月の給付制限が課せられてしまう。
おそらく多くの労働者が、不当な契約や長時間労働やパワハラや賃金未払いなどで退職させられているにもかかわらず、「自己都合退職」として処理されているのですね。
そのため今野さんが書いているように、雇用保険制度の利用率が低く、まったく機能していないという実態があるのです。
まさに「失業を保障しない雇用保険」となってしまっているのです。
生活保護制度も捕捉率が低く、社会保障制度として機能していないことが問題ですが、雇用保険についても利用率が2割弱しかない。
なんでせっかくこういう制度があるのに、生活困窮者や失業者の生活を手厚く保障しないのでしょうか。
低賃金を改善することも必要ですが、こういったできることすらやっていない行政の不作為は大きな問題です。
これは押さえておくべき話だと思われます。
本日の記事は以上です。
☟『エキタス 生活苦しいヤツ声を上げろ』今野晴貴、雨宮処凛 著(かもがわ出版)
☟『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴(文春新書)