40代オッサンtrrymtorrsonの雑記

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アマゾンの高評価レビューに???『わが子を「メシが食える大人」に育てる』高濱正伸 著

 こんにちは、40代オッサンtrrymtorrsonです。

 我が家には娘が3人います。上が9歳の小学校4年生、下が5歳の双子で幼稚園に行っています。

 高濱正伸氏の『わが子を「メシが食える大人」に育てる』を読みました。

 特に子どもの教育を意識しているわけではありません。「メシが食える大人」って何?自分自身が、著者の言う「メシが食える大人」になっているのか?ということが気になったので手に取ったのです。

 結論から言うと、親が子育てに活かすために読むというより、大人が自分の気づきを得るために読むべき本だと思います。

 アマゾンの高評価レビューをいくつか読みましたが、私の感覚からズレた???なものが多かったです。

    

 著者の高濱正伸氏の本書発行時のプロフィールは次の通りです。

 1959年熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。1993年、同期の大学院生たちと小学校低学年向けに「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。

 長年取り組んできた野外体験のサマースクールや雪国スクールは人気が高い。さらに、生徒の父母向けに行っている講演会は毎回、キャンセル待ちが出る盛況ぶり。算数オリンピック委員会理事も務める。

 著書に『考える力がつく算数脳なぞぺー』、『中学受験合格パスポート』『小3までに育てたい算数脳』『「生きる力」をはぐくむ子育て』『孤母社会 母よ、あなたは悪くない!』『国語の力を親が伸ばす』など。

    実は私は妻が高濱氏の講演が聞きたいというので同行したことがあります。いや、いい話でしたよ!

 メシが食える大人として成長していくためには、

ことばの力:人がいっていることや文章を的確に理解してポイントをつかむ力と、自分の考えを的確にわかりやすく相手に伝えたり表現する力。

自分で考える力:勉強でも日常生活でも、自分なりに考え、判断する力。これまで身につけた知識や技能を活用する力。物事を筋道を立てて考える力。

想い浮かべる力:具体的な物や事象だけでなく、人の心など抽象的なこともイメージできる力。細かな点だけでなく、全体も俯瞰して見ることができる感性。

試そうとする力:興味・関心のあることや面白そうなことにチャレンジしたり、与えられた課題を解決するためにさまざまな方法を試そうとする意欲。

やり抜く力:一度始めたことを、多少の困難があっても最後までやり抜こうとする力。やり始めたことに集中して取り組む力。コツコツ続ける力。

 これらの5つの基礎力を低学年までに育むことが欠かせないと言います。

 私はこの5つの力は、大人になっても学び続ける必要があるものと思いますが、高濱氏は「学年で言えば小学校4年生ごろ、9歳から10歳までが、この基礎力をつける勝負だ」といい、「基礎となる力を幼児期や学童期のうちから培っておかないと手遅れになる」との持論を展開しています。

 そのあと著者は、子供や若者の「意欲の乏しさ」を問題視し、「大人の100人に1人が引きこもり経験あり」という厚生労働省の調査結果を引用。「一度引きこもりになった人を、元に戻すのはひじょうに難しい」とし、「育ちあがっている」相手に、「生きる意欲」という、人としての根源的な問題を突きつけたところで手遅れだ、と危機感を煽っています。

 高濱氏のこういった主張を、私は少々暴論だと思います。

 本書の前半では、ニートや引きこもり群を「自分で飯を食っていく意欲が低い人たち」とし、仮に会社に入っても意欲が低くて、数年で辞めてしまうような若者たちを「低温世代」、「寄生型の社員」などと揶揄するような表現があり、少々不快なものとなっています。

 本書の底に流れているのは、幼児期や学童期から才能を開花させ、中学~高校~大学と、エリートコースを歩むのが正統であり、それ以外はドロップアウトだという考え方であり、こんな考え方を認めるわけにはいきません。 

 本書が発行されたのは2010年ですが、当時の労働環境や社会構造の問題への視点が全くありません。

    私は以前、就職氷河期世代に関する記事を書きましたが、ニートや引きこもり、著者の言う「低温世代」の問題を、すべて「本人の意欲の低さ」に帰結させてしまってはダメなのです。

 このこと以外にも、本書にはいくつかの極論や矛盾がみられます。

 本書の後半に、東大生に子ども時代を尋ねたアンケート調査の話が書かれています。

 東大生全員が「イエス」と答えたのは、ひとつは「小さいころに、親に『勉強しなさい』といわれたことがない」ということ。もうひとつは「母親がいつもニコニコしていた」ということだったそうです。

 このアンケートの結果を受けて、高濱氏は、「母親の心の安定」の重要性を説いているのですが、裏を返せば、東大生が育った家庭像が「正解」で、それ以外は「不正解」だといっているのと同じではないでしょうか。

 また、この手の教育書によく見られますが、学習意欲を国際比較する調査結果を引用しています。

 例えば、国際教育到達度評価学会が実施した調査結果(2007年)では、勉強が楽しいと思う割合は、算数では、日本の小学4年生は国際平均よりも10ポイントも低い。中学2年生になると、数学は国際平均より27ポイント、理科は20ポイントも低い。

 また日本青少年研究所が4か国の高校生を対象に行った調査(2006年)では、「偉くなりたいか?」という質問に「強くそう思う」と答えた生徒が、米・中・韓ではいずれも20~30%なのに対し、日本は8%しかなかった。

 また、高校卒業後の進路について「国内の一流大学に進学したい」と思っている生徒の割合がいちばん低かったのも日本だった。

 著者は、このような調査結果を引用しながら、今の20代~30代の若者の‟低温ぶり”を問題視しているわけです。

 「だから何?」と思います。だから日本人は不幸せでしょうか?日本という国は低迷していると言えるでしょうか?これらの調査結果が意味するものは何かをもっと掘り下げないといけないと思います。

    このような調査結果を見るとき、よその国と比較するのではなく、経年変化はどうでしょうか?50年前の日本の子どもの学習意欲と比較してどうでしょうか?

    そういった危機感を煽って、著者が推奨する幼児期や学童期でのエリート教育に誘導しようという意図さえ透けて見えます。

 著者自身が書いていますが、大学に入るまでに3年浪人して、大学でも4回留年。29歳で大学を卒業し、さらに大学院を修了したのは31歳のときだったそうです。

 「自分の可能性を探りながらの20代の漂流が、大人としての心の構えをつくった」と仰っていますが、こうした自身の歩み自体が、ドロップアウトした低温世代そのものではないでしょうか?

 言い換えれば、20代でも30代でも、生きる道を模索しながら「メシが食える大人になる」努力をしていくことが大事だ、と言うべきではないでしょうか?

 作家の佐藤優氏は著書で、40代、50代になってからでも、数学や国語を学習することが役に立つといっています。

    高濱氏は熱中することが大切だといいます。その通りだと思います。

 高濱氏が言うように、国語や算数・数学を学習する力が、5つの基礎力、①ことばの力②自分で考える力③想い浮かべる力④試そうとする力⑤やり抜く力を伸ばしていく、ということは否定しません。

 ですから、話を冒頭に戻しますが、本書を読む際には、教育論、子育て論の部分はバッサリ切り捨てて、自己啓発書だと割り切って読むべきだと私は思います。 

 

☟『わが子を「メシが食える大人」に育てる高濱正伸 廣済堂出版) 

 

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